スタジオ・バミができるまで…はじまり

現在スタジオ・バミがある場所は、私の実家があった場所。

もとは、母方の祖父母がこの土地を、昭和27年ごろに購入したそうだ。

母が16歳くらいだったと思う。

4人兄弟姉妹の末っ子だった母が、奥多摩の病院で働いていた父に嫁いで、私が3歳の時にこの土地に一家で戻り祖父母と同居、父はカタバミ医院を開業した。

開業から約30年、母が先に亡くなり、父も追いかけるように亡くなった。

主をなくした家と小さな医院は、50年近い間に増改築しながら、住んでいた人々のあらゆるものを内包したまま、朽ちていった。

小さくても町医者が廃院するのは大変なことで、残された医療機器やカルテ、レントゲン写真の束、薬の山、有象無象のもの達が残された。

仕事が無くなってしまった看護婦さんや事務で働いてくれた方々が、私にはよくわからない医療関係の物を、最後の仕事として整理し片付けてくれた。

そんなある日、カタバミ医院の診察室に入ると、片付けている看護婦さんの横に、ご近所のNさんが話しかけていた。

私はそのとき、町医者として父が開業して続けてきたことは、ただ医者として患者さんの病気を治す手伝いをするだけではなかった、と悟った。

家族にはとっても無口で何を考えているかさっぱりわからない父だったが、患者さんには話を聞き説明をしっかりしてくれる「いい先生」だったと言われる。

看護婦のMさんも、いつも笑顔で誰にでも気軽に声をかける明るい女性だった。

そして母は、父にも従業員の方々にも、患者さんにも、慕われた優しくしっかりした大黒柱だった。

母の葬儀は、医者の父と同じくかそれ以上に弔問客が集った。皆、母を心から偲んでのことだった。

父と母は12も歳が離れていたので、母は父が医者を辞めた後のことを考えていた。

母は通信教育で保育士の資格を取って、当時はまだ殆んど無かったと思われる、病児保育(仕事をしている両親に代わって、病気の子どもを預かる)の場にしようとコツコツ勉強していた。結局祖父母の面倒を見るために、最後に必修のスクーリングに行けず、断念したのだが・・・。

カタバミ医院を廃院にするときに、「なんで自分は医者にならなかったのか」、と初めて本気で後悔した。(たぶん無理だったと思うけど…)

子どもを育てたり、高齢の祖父母を見るにつけ、核家族化した日本の家庭で、老人や子どもを面倒見る人達の孤立を目の当たりにした。

人が集う場所

人が助け合える場所

人が学べる場所

人が認め合える場所

人が憩える場所

そんな場所がなくなってしまうのは悲しい。

だとしたら、私が出来るかたちで、「場所」をつくりたい・・・、そんな想いが「スタジオ・バミ」ができる原動力となりました。

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コメント

  1. 和美 より:

    さっそく見つけました!…こんな古い記事にコメント書いて大丈夫かなぁ…?

    この記事を読みながら、とても懐かしくなりました。そうそう、方波見先生ってあまりしゃべらなかったな~とか、看護婦さんたちは明るくて元気だったなぁ~とか、夕飯時になると、おばさんに「先生呼んできて」と言われて、あの細い廊下の先の開けちゃいけない感じのドアを開けて方波見先生を呼びに行ったり、とか。思い出は尽きない!ここでは書ききれませぬ。

    でも、何といってもかぼちゃスープ♥思い出の味です。

    東京でコンサートやっていたのね!う~ん、惜しい事をした!私も、打楽器好きだから(悲しいかな、たたけないけど)、都合が合えば今度コンサート見に行きたいです。新しく生まれ変わった与野の家にも行きたいなぁ…

  2. bami より:

    和美さま

    早速コメントいただき、有難うございました。
    あの頃まだ可愛い女の子だった和美さんが、立派な女性になってこのコメントを書いてくれたのって、なんだか不思議な気分になります。

    もう元には戻れない、今はここにいない人々が元気で一緒にいた、そんな時代をフラッシュバックのようにありありと思い出しました。

    >あの細い廊下の先の開けちゃいけない感じのドアを開けて

    そう、この感じ、子どものときの自分の感覚まで思い出した。
    母のカボチャのスープも、セットになった箸とスプーン、フォークこと、覚えていてくれたんですね。
    私自身忘れていた実家の様子、いろいろ思い出しました。
    有難う!!

    コンサートの情報などは、このブログのライブ欄に随時更新しているので、覗いて見て下さい。

    また、ゆっくりお話出来たらいいな~~。
    コメント残してくれて、本当に、有難うございました。
    嬉しかったです。

    バミ

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